宗谷の教職員は、学習指導要領が変わるたびに、「こんな学校を作りたい」「教育活動をこう進めよう」という教育活動の設計図を、父母・地域住民の声をもとに作りあげてきた『教育課程づくり』の運動を進めてきました。

 

2020年から実施される学習指導要領については、文部科学省が「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」を出しています。この中から、今回は「2030年の社会と子供たちの未来」に関してまとめます。

 

 

 

グローバル化と、地域社会

 

審議のまとめでは、「2020年から、その10年後の2030年頃までの間、子供たちの学びを支える重要な役割を担うことになる。」としたうえで…

 

○知識・情報・技術をめぐる変化の早さが加速度的となり、情報化やグローバル化といった社会的変化が、人間の予測を超えて進展するようになってきている

○進化した人工知能が様々な判断を行ったり、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されたりする時代の到来が、社会や生活を大きく変えていく

として、グローバル社会・情報化社会の中でどのように「新しい価値」を生み出していくのかということを指摘しています。

 

 

 

宗谷地方の現状

平成27年度学力・学習状況調査の質問紙の中に次のような質問があります。

(27)今住んでいる地域の行事に参加していますか   

(28)地域や社会で起こっている問題や出来事に関心がありますか  

(29)地域や社会をよくするために何をすべきかを考えることがありますか  

  

小学校での結果を、全国・全道と宗谷管内を比較すると、「(27)今住んでいる地域の行事に参加していますか」については、「当てはまる・どちらかといえば当てはまる」と答えた割合に大きな開きがあります。全国・全道ではおよそ60%であるのに対し、宗谷の子どもたちは79%の子どもたちが地域行事に参加していると答えています。

一方で、地域や社会に対する課題意識や社会参加については全国・全道よりも低い傾向にあります(質問番号28と29)。

宗谷のような過疎地を抱える地域では、これからの時代に地域がどのようになるかということは大きな課題です。地域のみなさんや保護者の方々が、この視点をどのように考えているかということを意識することは、教育課程づくりに欠かせない視点です。

 

注釈には小さく…

 このような観点について「審議のまとめ」では、8ページにある注釈で小さい字で次のようにふれています。

  

ここで言う新たな価値とは、グローバルな規模でのイノベーションのような大規模なものに限られるものではなく、地域課題や身近な生活上の課題を自分なりに解決し、自他の人生や生活を豊かなものとしていくという様々な工夫なども含むものである。

 

 審議のまとめと、実際に出される学習指導要領がどのような関連になるか、注視していかなければなりません。そして何より、目の前の子どもたちを中心に据えて、宗谷のような地域の上で学校はどんな教育をしていくか…ということを地域ぐるみで考えていきたいものです。                                                                         

 

                                                                                                               

 

 1.「論点整理」から

 

「論点整理」では、学習指導要領の在り方について言及しています。

 

 

「社会に開かれた教育課程」を実現するという理念のもと、学習指導要領等に基づく指導を通じて子供たちが何を身に付けるのかを明確に示していく必要がある。

 

 

そして、子どもたちの「真の理解、深い理解を促すため」の学習のプロセスとして、次のように述べています。

 

主題に対する興味を喚起して学習への動機付けを行い、目の前の問題に対しては、これまでに

獲得した知識や技能だけでは必ずしも十分ではないという問題意識を生じさせ、必要となる知識や技能を獲得し、さらに試行錯誤しながら問題の解決に向けた学習活動を行い、その上で自らの学習活動を振り返って次の学びにつなげるという、深い学習のプロセスが重要である。また、その過程で、対話を通じて他者の考え方を吟味し取り込み、自分の考え方の適用範囲を広げることを通じて、人間性を豊かなものへと育むことが極めて重要である。

 

 

 また、人生を主体的に切り拓くための学びとして、主体的な学びの鍵になる教育活動として次のように示しています。

 

 

学校教育に「外の風」、すなわち、変化する社会の動きを取り込み、世の中と結び付いた授業等を通じて子供たちにこれからの人生を前向きに考えさせること

 

 

 

 

2.私たちの教育実践という財産との関連は

 

学習指導要領の在り方を検討する所以として、「子どもたちが学びに関して持っている潜在的な力を、教育を通じて洗練させ、教員自らもその力を発揮し、教室や社会で共に生き生きと活躍できるようにするため」としています。

 

「真の理解、深い理解を促すため」の学習の在り方が示されるなど、学校の学習活動の在り方を示すだけでなく、学習活動を通して子どもたちの「社会で生きていくために必要となる力」を身につけるべく、学校教育に「変化する社会の動きを取り込」むことをめざしていることがわかります。

  

学校の教育活動は、地域や学校の特色ある活動が教育課程に位置付けられています。一方で、学力向上に関する施策に取り組んだり、子どもたちが抱える今日的課題を、学校を中心にした連携で課題解決を図るなど学校に求められる業務の幅は広がっていて、教師の多忙化にもつながっていたりします。

 

「論点整理」が示すような授業を行うことができる環境は、教師にとって理想です。しかし実際には、取り組まなければならない課題が山積しています。また、「論点整理」などが述べている理想の姿は、必ずしも理想ではなく、すでに取り組まれているものもあるはずです。

 

次期学習指導要領改訂に向かっては、「変わるから何をどうする」という議論よりも、「いま、ここまでできている」というように、我が校の教育活動を建設的に振り返る視点が欠かせないのではないでしょうか。

 

1.はじめに


中央教育審議会が、学習指導要領に向けた「審議まとめ案」を出しました。
時数増や、外国語・道徳の教科化など、目立った変更点があるため、報道ではそちらに重きが置かれています。
次期学習指導要領に向けたこれまでの審議のまとめ(素案)のポイント」では、


「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」の視点から学習指導要領の要であり、教育課程に関する基本原則を示す「総則」を抜本的に改善し、必要な事項を分かりやすく整理。


とあるように、次期学習指導要領は、記述面・性格面にも大きな変化があるようです。

そこで、遅ればせながら「教育課程企画特別部会 論点整理」にある、学校像や子ども観を確かめながら、これからの教育の向かう方向性を確かめることにしました。

学習指導要領が、全面実施から次の改訂まで、ほぼ10年周期だということがあり、論点整理では2030年の社会と子どもたちの未来という観点から、予測が困難な将来において、子どもたちに必要なこと、そのために学校に求められる視点が示されています。

 

2.「論点整理」から


【子どもという観点で】


主体的に向き合って関わり合い、その過程を通して、一人一人が自らの可能性を最大限に発揮し、よりよい社会と幸福な人生を自ら創り出していくことが重要である。
社会的・職業的に自立した人間として、伝統や文化に立脚し、高い志と意欲を持って、蓄積された知識を礎としながら、膨大な情報から何が重要かを主体的に判断し、自ら問いを立ててその解決を目指し、
他者と協働しながら新たな価値を生み出していくことが求められる。

子供たちが、身近な地域を含めた社会とのつながりの中で学び、自らの人生や社会をよりよく変えていくことができるという実感を持つことは、貧困などの目の前にある生活上の困難を乗り越え、貧困が貧困を生むというような負の連鎖を断ち切り未来に向けて進む希望と力を与えることにつながるものである。

 

【学校という観点で】


子供たちに、新しい時代を切り拓ひらいていくために必要な資質・能力を育むためには、学校が社会や世界と接点を持ちつつ、多様な人々とつながりを保ちながら学ぶことのできる、開かれた環境となることが不可欠である。

〔論点整理「1 2030年の社会と子供たちの未来」より〕

 

3.私たちの教育実践という財産との関連は


新自由主義による個人主義、競争原理が私たちの生活に浸透しています。こうした中で、子どもたちが抱える困難性が複雑になっているという事例は学校現場にたくさんあります。ケースごとに事情は様々で、教職員をはじめとしたネットワーク体制でフォローしている実践もよく聞くようになってきました。


「チーム学校」という言葉が出されてしばらくたちます。教職員と、学校を応援する様々な専門家が手を結び、子どもたちのために寄り添うことことの必要性は、前段落で挙げたような事例が物語ります。


私たちは、「論点整理」が示している「未来の姿」や「未来に向かうの視点」と、現在の学校現場の創造的な営みを結びつけながら、「うちの学校の『学校づくり』の現在すでに存在する財産」を整理していくことが大事ではないでしょうか。
同時に、私たちが宗谷の教育運動のうえで大切にしてきた「教育課程づくり」の運動の歴史も振り返る必要があります。


 今年度中に中央教育審議会答申が出され、学習指導要領が改訂される見通しがあります。
こうした中では、「アクティブラーニング」や「開かれた教育課程」「カリキュラムマネジメント」など、定義を正しく理解し、私たちがめざす民主的学校づくりとの兼ね合いを研究する必要があります。

 そんな中で、朝日新聞が授業時数増について報じています。
「授業年35時間増、文科省が対策へ 小5・6、2020年度から」2016年7月21日

 小学校高学年は現在「年間980時間」です。これに外国語活動が教科化され、現在の週当たり1時間から2時間になることを受けて、総時数が「1015時間」になるというものです。

 中央教育審議会初等中等教育分科会 の「教育課程部会 小学校部会」の「小学校部会の議論について」(リンク先はPDF)では、時数の考え方について次のように記しています。


高学年において年間35単位時間増となる時数を確保するためには、外国語に多く触れることが期待される外国語学習の特性を踏まえ、外国語科を中心にまとまりのある授業時間との関連性を確保した上で、効果的な繰り返し学習等を行う短時間学習を実施することが考えられるが、他にも、45分に15分を加えた60分授業の設定、夏季、冬季の長期休業期間における学習活動、土曜日の活用や週あたりコマ数の増なども考えられるところであり、場合によってこれらを組み合わせながら、地域や各学校の実情に応じた柔軟な時間割編成を可能としていくことが求められる。

 ひと昔前に、「モジュール」・「ユニット」などによる2コマ続きや1単位時間(小学校の45分や中学校の50分)にとらわれない時間の使い方が推奨されたことがありました。それに当たるような考え方や、土曜授業などあらゆる機会で時数を確保する方向で議論がされています。

 実際の学校現場では、様々な子どもたちがいます。「ランドセルに家庭を全部詰め込んできている」という言い方が昔ありましたが、おかれている状況も一人一人様々です。そうした中で、こうした時数増がどのように影響するか心配です。また、教職員の働き方の課題はますます深刻になるでしょう。「チーム学校」として、地域の様々な役割の方々とつながることで、つながりを作るための時間や場が必要になることも考えられます。

 私たち宗谷の教育関係者が大切にしてきたものもあります。民主的学校づくりなど日ごろから意識しているものももちろんですが、学習指導要領改訂の際には、「教育課程づくり」という、私たちが目指す教育をどう実現していくのかという大きな議論があります。もちろん、これは組合が行うことというよりは、学校の教職員集団として、一人一人が真剣に考えるものです。宗谷教組としては、二〇二〇年に向かう教育課程づくりの大きな運動を前に、大切にするべき視点を学び合う運動を創りたいと考えています。