この週末は、静岡で全国教研が行われました。
宗谷から3名の先生が参加しています。
facebookを見ていると、全国の実践家の先生方が静岡に集い、それぞれの役割を発揮されていることが伝ってきます。
どうしても、北海道、特に宗谷のようなへき地性の高い地域からは、全国教研はなかなか敷居の高い集会になってしまいます。ただ、全国の全教に集う先生方の様子を見ていると、そういうことではないのも…と思うこともあります。

大事なのは、身近な学びの場をどう創るか…ということなんだと思います。

宗谷では、長い間「学校研究を土台にして、目の前の子どもたちを中心に据えた学びを紡ぐ」ということが、宗谷の教育研究運動の骨格として示され、実践されてきました。もう60年以上の歴史があるものです。

これは、(研究の方策としての)特定の考え方による論争を避けるというような目的もあったものだと思われます。
一方で、情報化社会が進み、インターネットで様々な教育技術に触れることが容易な時代となりました。

こうした過去と現在のあいだで、私たちはどう学びを紡ぐのかということが問われています。
もちろん、「忙しい」という先生方の声を受け止めることも大切です。
そのうえで、「いい先生になりたい」という、『学校の先生になりたい』と思ったときに誰もがきっと願った思いにどう応えていくのかということもあります。

学びの場づくりを進めるうえで、全国教研に集うみなさんの様子はとても刺激になりました。
場があって、学びがある…ということを組織するのも、教職員組合の大切な役割なんだと思います。

組合の運動にはいろいろあります。
「へき地級地を守る取り組み」のように、いきなり勃発する緊急性の高い課題もあれば、「自分の街の教育をよりよくしたい」というような、各支部がそれぞれに奮闘する課題もあります。

今年は、じっくりと自分の学校・職場や市町村の課題に向き合い、各支部が主体的に取り組みを進めています。

ある支部では「先生方の多忙感を解消したい」と考えます。
それも、組合としてどこかに要求として突きつけるのではなく、教育条理に照らして、教育関係者との協同の視点を大切に取り組むことができるよう、支部で検討をしている…と。
『支部で相談し始めたところ、予想以上に長い取り組みになるかも』と言いつつも、奮闘している様子が伝わってきます。

また、いくつかの支部では、教育講座運動に取り組もうというところもあります。
宗谷の長い歴史の中では、分会や職場ごとに教育実践を語る…という「教育講座運動」というものがありました。
時を経て、なかなかこうした文化は残っていないのですが、「長い目で取り組んでいくために支部で考えている」という声をいくつか聞くようになりました。
一方で、先生方が「学びたい」と思うためにはどんな手立てや提起が必要か、長続きする仕組みとはどういうものかと懸命に考えている支部もあります。

2020年の学習指導要領改訂に向けて、私たちがめざす「教育」とはどういうことか、自分たちの学校の、学校づくりはどうあるべきかを考える日々が始まっています。
まずは、1年半後にやってくる道徳の教科化に向かって、今行っている学校づくりを土台に道徳の指導計画を作ることです。

こうして、立ち止まって現状や今後必要なコトなどを考え合うことができるのも、教職員組合の役割のひとつです。
「やっぱり組合は大事だね」と思える活動が宗谷管内のあちらこちらで興っています。こうした息吹を大切に育てていきたいです。

先日、支部代表者会議がありました。会議の中で、各市町村の子どもたちや先生方の現状について交流する場面がありました。

一様に「大きな事例はないが、忙しい」という声がたくさん聞かれました。

「アンケートや集計しなきゃならないことが昔より増えた気がする」
「先生方はまじめだから、何も言わず黙々と仕事をしているのが気になる」
「意義が置き去りなり、形だけが残っている会議があって、多忙感につながっている」

宗谷管内のあちらこちらの街の現状が、支部の現状認識も含めて語られました。

この多忙をどう解決するかということを、正直悩ましい課題です。

教育条理を大切にして、「目の前の子どもたちのために」と奮闘することは否定されるべきことではありません。
しかし、そのことが先生方の忙しさに拍車をかけています。

“学校の先生のお仕事”は、突き詰めるときりがありません。みんなどこかで、「このあたりで」と歯止めをかけながら仕事をしています。
それは、「時間」という物理的な制約だったり、子育て・家事との両立という奮闘だったり、趣味にあてる時間だったり、様々です。

本来ならば、例えば「教員も残業代をもらえるようにする」とか「教員を大幅に増加させる」などという行政主導の「制度面の大胆な改正」が行われることが大事で、私たち教職員組合は署名・対話活動で少しずつ「そうだよね」という世論を成熟させていきたいところです。
しかし、こうした取り組みは少しずつしか進みません。
30代半ばの先生が以前話してくれたことがありました。
「俺らの時代って、要求が100%かなった…って経験、あまりないよね」と。
そう。要求は叶いづらくなっているのかもしれません。でも、要求って「叶ったか・かなわなかったか」という「0か100か」ではないはず。じわりじわりと広めていくこと、広まっていくこともあるんだと思います。

また、行政主導のような「制度」を変えるということも大事ですが、自分たちのまわりで「知恵や工夫」を生かしてコツコツやっていくという方法もあります。教職員組合だからできることです。
例えば、職場づくりだったり、先生方の同僚性だったり、そうした部分に働きかけることってとても大事なことです。また、先生方の「困ったなぁ」とか「ちょっと聞いてよ」という悩みや愚痴に寄り添えるのも教職員組合の得意なところです。「教育条理に照らして大事にしたいことは何か」という教育活動の本質をみんなで確かめ合いながら、現実的に「忙しい」に対抗する知恵や工夫を各分会で考えることは、可能なのではないかと思います。

宗谷教組としても、この問題についてはじっくり考えていきたいと思います。

宗谷教組が位置する北海道宗谷地方には、10の市町村があります。
宗谷教職員組合として各市町村ごとに「支部」を置いています。
宗谷には、山の街、海の街、離島と様々な街があり、地域性も様々です。
稚内から一番離れている学校は、150Km。東京-静岡と同じ距離だとか。

宗谷教組の各支部も様々な「味」があります。
ベテランの先生に学び、堅実に運動をしている支部もあれば、最近は、若い先生方が奮闘している支部も多くあります。

そんな中から、とある街の「支部会議」の様子がとても印象的でした。

毎回、ごはんを食べながらの「支部会議」は先生方が語ることに主眼を置いています。
日ごろ思っていることや、教育のこと、社会情勢などテンポよく語られました。
「じゃあまず、この話題をー…」としなくても自然と話が流れるのが、切り盛りの腕のみせどころかと感じました。

また、この支部のすばらしいところは、話した内容をすかさず「支部情報」にまとめて発行していることです。
参加できなかった組合員の先生だけでなく、「組合ってこういう教育的な取り組みをしているんだ」ということを伝えていくためには欠かせない取り組みです。

「組合っていいな」っていう活動を、宗谷の中にひろめていきたい。
そのためには、「組合はここで動いている」ということを、みんなで確かめ合っていく必要があると考えています。
実際、本部にいてもわからないところで、実に様々な「組合の取り組み」が行われています。
そうしたひとつひとつを、見えるようにすることが組合の財産につながるのではないかと思っています。

宗谷教組では、6月4日に「組合づくり勉強会」を行いました。テーマは「教組運動の歴史を学び、未来への希望を語ろう」。管内各地から20名ほどの先生が参加する中、組合づくりのより良い形を考え合う貴重な時間となりました。講師として、現役時代に組合活動でご活躍された柳 憲一さんと加藤良平さんを迎え、参加された先生方のエピソードとともに、組合づくりを考えました。

 

みんなが思う願いは「いい先生になりたい」


学校で働く先生方にとって、主義・主張に関わらず共通する願いは「いい先生になりたい」ということではないか…という言葉から学習会がスタート。「管制研とか学校の研究ではなかなか聞けないようなことだって聞けるのが、組合の活動であるはず」ということで、組合だからできる教研活動をはじめとするさまざまな活動ができるという視点を学びます。
組合は「光を当てる」役割
 学習の全体に流れていた考え方に「組合活動には、光を当てる役目がある」ということがありました。頑張っている先生に光を当てることはもちろん、組合がなければ気づかないような保護者の願い、教師の要求にも気づいて運動にしていくことについても語られました。宗谷の教育運動の根底にある署名運動の意義について、「保護者の願いを聞くことなしには進まない」という視点も語られました。 

 

制度を変えるということは難しいかもしれないけれど…


組合づくりと共に語られるのが、「学校の忙しさ」などの先生方の苦悩があります。学習会の中では、「自分がよりよく生きるため」の方法や知恵を出し合うこと、また、そのために先生方の声をもとにした運動づくりを進めることについても語られました。どうしても、最近の情勢からすると、「制度が変わらないとダメなんじゃないか」と考えてしまいがちですが、「『知恵』や『工夫』で解決できることもある」という視点は、改めて考えるきっかけにもなりました。

 

分会から運動が動き出す


参加者のみなさんにもお話をしていただきました。「私と組合」というお話が多く、今後の運動づくりにも関わる視点がたくさんありました。組合運動の苦しさに関する発言もありました。一方である分会長さんは「自分にまわってきた役割だと思ってできることをやりたい」と話してくれました。

【参加者の感想より】

◆組合として何ができるか、何を生み出していくかが見通しをもって取り組んでいくことが必要だと思う。あとは、子どもたちに対して接していく教師の我々が生活を安定させていくことが大切だと思いました。そのためにも分会員で力を合わせて職場の環境や雰囲気をいいものにしていきたいと思います。

◆支部の困り感、分会の困り感を解決する示唆をお示し頂いたことに感謝します。明日からの組合活動をしかける、束ねる側の立場になった者として、また頑張ってみようと思えるお話でした。

◆分会会議の充実が活動の基本なので、その内容をどうやって充実させていくか。安心して分会員の思いを出し合える分会の雰囲気づくりを意識してやっていきたい。

 

一人ひとりの願いや思いを汲み取る活動こそ、分会が主役となって活動を興すことにつながるということを学びました。今後も様々な場でこうした学びを組織していきたいです。