宗谷の多くの学校では、2学期の始業式を迎えます。

 

学芸会とその先のしっとりと学習を進める時期に向かって、集団づくりと学級づくりに取り組むシーズンがはじまります。

 

新学習指導要領の実施を目前として、各学校では教育課程づくりの最終盤として教科の指導計画を整備したりする作業が2学期から3学期に向けて進みます。そして、新しくなる評価についても考え始めなければならない時期にきているのかもしれません。

 

そんな中で2学期のスタートに「ちょっと意識してみませんか?」と呼びかけたいのは、『子どもの学びを子どもの視点から振り返る視点を大事にしてみませんか?』ということです。

 

 

「教育課程づくり」と子どもの学びの姿をくっつけて… 

  

稚内のある学校ではいま、総合的な学習の時間指導計画の大幅刷新を進めています。

 

教務部を中心として進めている教育課程づくりに関わる担当の先生からは「今年取り組んだ活動をもとに指導計画にしていくので、時数と内容の記録を取りましょう」とお話があります。そこにスパイスをちょっと加えて、例えば「この時間では子どもがこんな『まとめ』を書いていた」とか「こんなふうにつぶやいたのが次の活動へつながった」みたいな記録もつけていったらどうでしょう。

 

たとえ話として4年生社会の授業のやり取りを紹介します。

 

 

  

授業のまとめでは、『リサイクル+有料化→ゴミがへった』とノートにまとめた子や授業のあとでこっそりと「せんせー、平成23年が減っているのは青いごみ袋だね」話す子もいたそうです。

 

こんなふうに子どもたちは日々の学校の生活の中で、つぶやいたり働きかけたり共に考えたり、時には悩んだりもしながらがんばっています。

 

そして、そんな子どもたちに働きかけるのは、ほかならぬ教師の言動はもちろん、授業づくりや集団づくりをどうつくっていくかという、いわゆる「教師の責務」(最近のことばでいう「教師の専門性」)にかかってきます。

 

この「教師の責務」や「教師の専門性」のもと、日々の教育実践を意識することで「教育課程づくり」を考えてみたいということです。

 

 

宗谷の「教育課程づくり」の歴史と、いまの状況 

  

ちょうどいまも取り組んでいる「教育課程づくり」という作業は、宗谷の教育の歴史の中でおおよそ次のように行われてきました。

 

 

①子どもたちの実態について共通理解を図る。

 

②それを受けて、「めざす子ども像」を共通認識にして、学校づくりに反映させる方針を持つ。

 

③教科の指導計画や各領域の計画を具体的に整備する。

 

④実際に教育活動を行いながら改善させていく。

 

2016年に学習指導要領が告示されて以来、学校は道徳教科化への対応や外国語・外国語活動へ対応するため、短い時間で集中的に指導計画を作成するなど、上の箇条書きで言う「③」の部分から教育課程づくりの対応を進めてきました。

 

限られた時間の中なので、「①」や「②」という、教育課程づくりの根幹の部分になかなか取り掛かれない学校が多くありました。

 

また、この10年でエビデンスという概念が生まれたことで、子どもの実態についても昔から大事にされてきた「語り合い」などから「学校評価アンケート」などによる数値に置き換えられている変化も生まれています。

 

2016年以降の数年間、私たちは「③/④→②」というような、宗谷の教育課程づくりのオーソドックスとは逆の手順で考えなければいけない苦しい状況を過ごしてきたともいうことができます。

 

 

 

 

だからこそ、子どもの声をもとにした教育をつくる議論を!

 

滋賀で行われた「教育のつどい」の中での「教育課程・教科書」分科会では、子どものつぶやきや保護者の願いをくみ取りながら、教室で子どもたちと関わり合う様子が報告されるレポートが多くありました。

 

宗谷で実践をしている私たちにとっての「教育課程づくり」とは、すごく大規模な、ダイナミックな印象を持ちがちです。上の箇条書きで言うところの「①→②→③」という流れに重きをおくこともあり、「学校全体のもの」という印象も受けます。一方で、具体的に学びが生まれているのは、「④」。私たちに一番身近な教室なのです。

 

「教育のつどい」での総括討論では、子どもたちのつぶやきを大事にした教育実践を、職場や保護者との共通認識に立つことで、ここでいう「④→②/③」という流れを作ることも可能だということが語られたり、そのためにも元来の教育課程づくりの必要性を今一度確かめることが大切だという議論が広がりました。日々の教育実践からのアプローチと、歴史的に大切にされてきた「子どもたちを真ん中において」という考え方を今日的に豊かに工夫してやっていこうというものです。

 

長くなりましたが…

  

「教育のつどい」開催地・滋賀の先生方次のように話していました。

 

『2009年の学習指導要領改訂の頃は〝教育課程づくり〟と言われても、よくわからなかった。でも、10年後(=2019年)を見据えて、子どもの姿で教育実践を語る取り組みを様々に続けてきたのです』

 

私たちは教育課程づくりと教育研究運動を、ややもすると区別させて考えてしまいがちです。

 

でも、広く全国を見ると私たちのオーソドックスな「教育課程づくり」とはちょっと手法や考える手順が違ったとしても、目の前の子どもたちが生き生きと学び育ち合うということをよりよく実現させるために知恵や工夫を出し合っている地域があり、先生方がいることに気づかされます。

 

日本の最北端・宗谷からできることはたくさんあるはずです。まずは、2学期の始業式に子どもたちと笑顔で再会し、たくさん話をするところからはじめながら、「この子たちと何ができるかな」って考えたいですね。

 

 

宗谷教職員組合では、学習資料「子どもたちをみんなで育てる『教育課程づくり』を進めよう」を発行しました。

 

教職員組合として、教育課程づくりの問題を扱うのは、学校としての動きとは区別して「文部科学省はどんな教育を目指しているのか」とか「この国は、人が育つことをどう考えているのか」などの背景を読み解いたり、教育課程づくりとは何かを考えることは、間接的に学校づくり・教育課程づくりを豊かにすることになります。

 

 

 

「ここが大切」という納得を求め合う

 

 

 

教育課程づくりを進める上では、バランスが大切になります。つまり、新指導要領に即した教育方法に照らしながら、我が校の子どもたちと大切にしていく学校文化や特色ある学習を生かしていくということです。そこには、数値化が難しいこともあるでしょう。安易に数値化をすることは、教育条理を手放すことにつながります。教職員が知恵を出し合い「ここが大切」と説明できるまで理解と納得を求め合うことが重要です。

 

 

 

教育課程を全教職員で創るためには…

 

 

 

定期大会の中で職場のエピソードが紹介されました。若い先生と話をしていて「教育課程は管理職から提示されるものだ。社会人として示されたものに従うのが常識だと思う」と言われたということ。「そうじゃないよ」と対話を深めたエピソードから、学習することが大切だという教訓が交流されました。

 

このエピソード、カリキュラム・マネジメントの観点から言っても教育課程は全ての教職員の参加によって行われるべきものです。新指導要領には、このように私たちが「これまでの財産として大事なことだよね」というように思っているものを代弁している部分があります。一方で、経済界・産業界が要求する「人材の育成」を進めようとする部分もあります。教育条理のうえで「微妙なバランス」のうえに成り立っている指導要領と言わねばなりません。

 

 

 

新指導要領の「微妙なバランス」を理解して…

 

 

 

だからこそ、私たちは学び合う必要があるのです。学習資料を発行したのも、こうした「微妙なバランス」を理解し合いたいからなのです。何回かに分けて読み合うとかしながら、学びを続けていきたいものです。

 

春以降も、教育課程づくりの取り組みを教職員組合として考えていきます。

 

2018年に道徳が「教科化」されます。
そして、今年度中には学習指導要領が改訂され、小学校では2020年から完全実施される予定になっています。

宗谷では、こういう大きな節目があるたびに「教育課程づくり」という考え方を各学校が実践してきた歴史があります。
目の前のこどもたちのために、この地域だから行いうる最大限の教育活動とは何か・・・という設計図を、全教職員で議論する取り組みです。

今回の「教育課程づくり」は、相当大きなものになりそうです。
2020年代を生きる子どもたちが、地域のつながりや、学校という営みから健やかに学ぶことができるように、考えることはいっぱいあります。

宗谷教職員組合ホームページでは、「道徳の『教科化』」と、学習指導要領改訂についての連載をしていくことにしました。

 

私たちが教育実践を紡いでいる北海道の最北端・宗谷地方には「民主的学校づくり」という考え方があります。その時代の社会情勢や教育課題に向き合い、憲法と47教育基本法、そして子どもの権利条約に立脚した教育運動です。宗谷の教職員は、保護者や地域のみなさんとともに、目の前の子どもたちの成長・発達を保障するという考え方を先輩教師の後ろ姿から学び、そうした営みが繰り返されて今日に至っています。


また、「民主的学校づくり」という考え方を、より具体的で実践的にしたものに「教育課程づくり」というものがあります。ひとつひとつの学校の教育の羅針盤である「教育課程」を、学習指導要領や、それをもとにした教科書学習を淡々と進めるためだけの指導計画ととらえるのではなく、地域の実情や父母の願い、子どもたちの様子など、学校のまわりのすべての要素を踏まえ、その学校の教職員集団が一丸となって考えるというのが「教育課程づくり」です。


 これから数年の間に、日本の教育が大きく変わろうとしています。2020年に予定されている学習指導要領の改訂と、それに先立つ「道徳の『教科化』」があります。宗谷教職員組合では、教育研究運動の一環として今後5年以内に起こる教育の大きな変化について、組合独自に研究する必要があると考えました。少しずつ、道徳の「教科化」と学習指導要領改訂に関して、現場の教職員の課題意識をもとに考えていくべき視点についてまとめていきます。